2013年10月22日火曜日

「なんだ!このスタバは!」


「キラフテ 木の靴べら専門店」 店主の宮原です。


先月末、「太宰府天満宮」に行ってきました。









今にも雨が降ってきそうな天気にもかかわらず、
大勢の人が訪れていました。

私は太宰府天満宮を訪れるのは3~4年ぶりです。
修学旅行生や、海外からの観光客で賑わう参道を歩いていると・・・










「何じゃ、こりゃ????」






そうです、あのおなじみの「スターバックスコーヒー」なんです。
すごい存在感です。しかも材料はたった1種類の角材のみ!






多くの方がこの前で足を止めていました。
時間がなかったので、中に入ることは出来ませんでしたが、
ぜひ店内から参道で見入っている人たちを眺めてみたいものです。






































2013年10月20日日曜日

刈り払い機「エンジンオイル」物語


「キラフテ 木の靴べら専門店」 店主の宮原です。


私の春~秋の定期的な仕事に、「草刈り」があります。
「エンジン刈り払い機」で刈っていくんですが、本年5月に新調しました。

購入したのは、以前から使ってみたかった「4ストロークエンジン」搭載の刈り払い機。
以前使っていた「2ストロークエンジン」のものとは異なり、ガソリンと潤滑油を混ぜて作る
「混合ガソリン」をあらかじめ準備しなくて良いし、排気ガスはクリーンで、音も静か。

4ストロークエンジンを示す
「4」のロゴが光ってますぞ!




早速、「普通のガソリン」を入れて使ってみたが、

 「いいぞ、いいぞ!確かに音も小さい!うんうん満足♩~」

と最高にご機嫌に刈ってましたが、気のせいか刈り終わる頃に

 「なんかパワーが少し落ちたかな?」

と感じたんです。まあ使い始めでエンジンもかなり熱くなってますから、
次回には元に戻っているでしょう・・・とその日はおしまい。


一ヶ月後、再び刈ろうと思い、エンジン始動し草刈り開始・・・
気のせいかエンジンの回転を上げないと、うまく刈れない。
でもこの時点では「4ストローク」ってこんなもんなんだな・・・」
となんとなく思い込み。

しかしさらに一か月後に刈っていると、とうとう「エンジンスロットル全開」
でも、ひょろひょろのわずかな草にすら刃物が回転しなくなっている・・・


「故障やな!」
ようやくエンジンがおかしいことに気づいた私は、
販売店に持ち込み、点検修理を依頼。

まだ購入から3ヶ月。
ごく普通に使っていたうえ、一年保証があるので、まあこれでOK.かと。





しばらくして販売店から連絡があり、
 「修理が終わりました」
と言われると思いきや、

「焼き付きを起こしていてピストンが溶けているそうです。
ただメーカーが言うにはエンジンオイルが全く入っていないそうで・・・
お客さんのほうで入れられましたでしょうか?」


 「・・・エンジンオイルって入ってないの?・・・」 


唖然としながらこの言葉を返してしまいました。
エンジンオイルを入れないといけないとは知りませんでしたし、
私はてっきりエンジンオイルは入っていると思ってましたから。

こちらも取扱説明書を引っ張りだして反撃!

 「説明書は使う前に全部読んだよ!
エンジンオイルを入れろとは書いてなかったよ!」

と取っておいた説明書を読みながら、
こちらに非がないであろうことを必死にアピール!



私はさらに

「これはメーカーの説明不足ではないか?メーカーの意見を聞きたい!」

とさらに食い下がる! 

 「では再度メーカーにその由を聞いてみます」
と販売店の店員さんは私をなだめるように言ってくれました。



しばらくしてその店員さんから連絡がありました。

「説明書には「最初にオイルを入れる」という項目は記載していません、
とのことです」


よし勝った!!

「でもその代り、オレンジ色の紙にエンジンオイルを
入れるよう書いてあるんそうですが・・・」

との言葉が次に聞こえてきました。
なに?オレンジ色の紙、ちゃんととってあるぞ。







「確かに、この紙は読んだぞ。でも保管状態の注意じゃないか・・・」

と思いつつ、このオレンジの紙をひっくり返すと・・・







「ぎゃ~!!!!!」



「エンジンオイルが入っていません。
ご使用の前に、推奨オイルを指定容量入れて・・・」

 と、しかも太字で書いてある。  

完全に見落としていた・・・裏まで見ていなかった・・・完全に私のミス。


 


 「完全修理はシリンダー交換になるので、\22,400 になります。」

\29,700で買ったのに、3か月後に \22,400 ・・・

正味\52,100!!!!(泣)



*追伸、後日その販売店に行った際、
 私が購入した同モデルが陳列されていましたが、
 付属品の入った袋の中に「エンジンオイル」が入った小瓶が
 追加されていました。

 これはとっても素晴らしいことです。
 私のような痛恨のミスをする事例はなくなるでしょう。
 やはり日本のメーカーさん、対応の早さ、さすがです。












2013年10月16日水曜日

本物の「ゼロ戦」を訪ねて(その5 番外T-33練習機編)


「キラフテ 木の靴べら専門店」 店主の宮原です。


数回に分けてご紹介させていただいたこの「大刀洗平和記念館」ですが、
目の前に「甘木鉄道 太刀洗駅」があります。

私はまだこの「甘木鉄道」に乗ったことがないんですが・・・




「太刀洗駅」から見た「平和記念館」。
近くて便利ですね。



さてこの駅の隣には、ほとんどの方が
「えっ、あれ何!!」
と目を奪われてしまう光景があります。

それがこれ! 

「自動車」を看板代わりに使っているところは
見たことがありますが、「ジェット機」は初めて見ました。




「プロペラ機」を堪能した後で「ジェット機」も・・・
「大刀洗」おそるべし!



真下からの撮影もできる!



これを展示しているは、「大刀洗駅」に併設する「大刀洗レトロステーション」。
その日は閉館だったのがとっても残念!

昭和42年生まれの私、今度またぜひ訪れたい!



航空自衛隊の「T-33練習機」だそうです。



「天狗」のマークがGOOD!







「大刀洗」には、わずか3時間ほどの滞在でしたが、とても中身の濃い時間でした。
 









2013年10月8日火曜日

本物の「ゼロ戦」を訪ねて(その4 エンジン)


「キラフテ 木の靴べら専門店」 店主の宮原です。


では最後に「エンジン」のご紹介です。

手前の部品は「プロペラ」です。






「零戦」のエンジンは、「星形エンジン」と呼ばれる形で、
7つのシリンダーを円形に並べ、それを二つに重ねた「14気筒(多い!)」。

今の乗用車の標準的な気筒数が「4気筒」ですから、相当多いですね。
冷却方法は、空気で冷やす「空冷」方式です。

*ちなみに今の乗用車は、水を循環させて冷やす「水冷」方式がほとんど。


エンジンの排気量は、なんと27900ccありました。
「2000cc乗用車」の14台分・・・でもエンジン出力は「1130馬力」。  

現在の車と比較すると
「ホンダ ステップワゴン」 2000cc  = 150馬力、
27900ccに換算すると=「2100馬力」

零戦は「1130馬力」ですから、約半分の出力しかないですね。
*もちろん単純には比較できないので、あくまでも参考に。


当時の日本のエンジンの出力は世界水準以下の能力で、
この低出力のエンジン性能を補うために、防弾装備すら削り、
徹底した軽量化と、空気抵抗の軽減が図られたわけです。

プロペラシャフトの先端だけでも
こんなに複雑な工作が・・・



シリンダーが前後に、かつ
ずらして並んでいるのがわかります。



シリンダーブロック。
これ一個で2000cc乗用車一台分の排気量!



戦闘機に「空冷エンジン」、

メリットは
  ・構造が簡単で軽量。
 ・エンジンが被弾しても「水漏れ」がなく、そのまま飛行できる率が高い。

 
デメリットは
 ・星形シリンダーゆえ、機首が大きくなり、空気抵抗が増える。
 ・エンジン全体に風が当たらないと冷却できない。 

というものです。



これに対して当時の欧米の最新鋭の戦闘機には
「水冷エンジン」が多く採用されています。

メリットは
 ・ラジエーター部分だけに空気が当たればエンジンが冷却できる。
 ・シリンダーを縦長に配置くできる。=機首が細く、空気抵抗が減る。

 
デメリットは
 ・部品点数が増え、構造が複雑になり、重量が増える。
 ・エンジン被弾による「水漏れ」で、エンジン全体が冷却できなくなる。


というものです。

戦闘機を高速化には「水冷」方式が向いています。





水冷エンジンは、基本的にシリンダーを円形でなく縦長に並べていくので、
エンジンシャフト(プロペラシャフトを兼ねる)が空冷星型エンジンに比べて
ずっと長くなります。

欧米では、長いエンジンシャフトを何ら問題なく精度高く製造できましたが、
当時の日本では、長くなったエンジンシャフトの精度を出すことが出来ず
エンジンを廻すと、ものすごい振動を起こしてしまったそうです。


実際、日本軍も「水冷戦闘機」を開発、正式採用しますが、
機体はとっくに完成していても、肝心のエンジンが出来上がらず、
「首なし」飛行機が、ずらっと並んでいたそうです。


また、何とか完成させ、戦地に送り出したものの、故障が頻発し、
保有する機体の半数しか出撃できないほど、信頼性が低かったようです。


のちに、このトラブルが多い「水冷エンジン」の搭載をあきらめ、
「空冷星型エンジン」を載せてみると、最高速度こそ大きく落ちましたが、
故障がなく信頼性と運動性能が抜群に良くなり、米軍の最新鋭機と互角に
戦えるほどの戦闘機に生まれ変わったそうです。


それほど日本は「水冷エンジン」の生産に苦慮しており、
自ずとこの「空冷エンジン」が主流になったのです。






シリンダーフィン。ここに空気が通って熱を奪います。
このフィンの厚みが薄く、その間隔(ピッチ)が狭いほど
冷却性能が高くなります。



長いエンジンシャフトが必要な「水冷エンジン」の製造では、
欧米に大きく劣っていた当時の日本工業力でしたが、
「空冷エンジン」のシリンダーフィンの製造技術は非常に高く、
「薄いフィン」を「非常に狭いピッチ」でつくる技術を持っていました。

「技術力」というより「職人の技量の高さ」といえなくはないですが・・・


このように「零戦」は、当時の日本の低い工業力(アメリカの1/10)を
知恵と工夫と職人技を結集して、ようやく実現できた戦闘機だったのです。


しかし米軍の手で次第に零戦の弱点が暴かれ、対応策が取られ始めました。
さらに2000馬力級の強力なエンジンと、鉄壁の防御を誇る米軍新型戦闘機が
次々と登場し、零戦の優位性は無くなっていきます。

日本も新型戦闘機の開発を進めますが、資材不足とエンジン開発の遅れから
この零戦をマイナーチェンジしながら使い続けることとなってしまいます。


そして最後は特攻機として使われます。

本当に悲しい末路です。

割れたクラッチケース・・・
何か訴えてるように感じるのは私だけではないはず。



「大刀洗平和記念館」では、「零戦」のみが撮影許可となっており、
その画像をもとに、浅い知識にも関わらず書かせていただきました。
しかし「大刀洗平和記念館」における「零戦」展示はあくまでも一部です。



館内には当時のパイロットの装備品や衣装をはじめ、出陣を迎えて
その決意を記した旗、家族に書き記した手紙などが多数展示されています。
また慰霊の言葉とともに戦死された方々のお写真が飾られています。


旧陸軍大刀洗飛行場からは多く特攻機が出撃したそうですが、その搭乗員が
家族に向けた手紙に内容は、実にやさしく感謝にあふれたものでした。
これから死を覚悟した片道の出撃をする人が書いたとは思えないほどです。


また、この大刀洗飛行場めがけて空襲があり、集団で避難していた小学生たちに、
爆弾が集中してに落ちてしまったとのことです。
いたたまれない気持ちでいっぱいになります。


ちなみに記念館の天井には「B-29爆撃機」の実寸での大きさ表示があり、
まさに「超空の要塞」。これが数十機の編隊で飛来し、爆撃を開始したら
どれだけ恐ろしいことか・・・


近世の戦争が、昔の戦のように
「戦場で武将が合いまみえて勝敗を決す」
では終わらないことを、ひたすら実感しました。

 
この日は大変多くの方が来場しておりましたが、
私だけでなく皆さんもそれぞれいろんなことを感じているようでした。
お近くの方はぜひ一度見学されることをおすすめします。

















2013年10月6日日曜日

本物の「ゼロ戦」を訪ねて(その3 コクピット)


「キラフテ 木の靴べら専門店」 店主の宮原です。








今回はいよいよ「コクピット」の紹介です。


本当にありがたいことに、この記念館は、
「零戦」だけは撮影が許可されています。

しかもコクピットの脇まで、見学用タラップが伸びていて、
コクピット(操縦席)を手に取るような鮮明さで撮影が出来ます。
(ただし、お客さんが後ろで待っているので、超速撮影です!)

機体の大きさに比べて、操縦席は
「思ったより狭い」・・・


いかがでしょうか?
コクピット内は、ほぼ当時のままじゃないですか!!

零戦は単座戦闘機なので、パイロットはここで複雑な操縦を
すべて「独り」で行っていたんです。


かつて「プラモデル小僧」だった私は、少ない実機資料の本を見ながら
細工を施したものでしたが、その当時にこの零戦を見ることが出来たら
どれだけ興奮していたかわかりません。






コクピット内をよく見ると、
各所に丸く開けられた「穴」があるのがわかります。
特に、風防ガラス越しの金属製のシートの背面には
たくさん開けられています。

これは「1グラム」でも軽くするための工夫で、強度が許す限り、
このように機体各所に穴を開け、徹底した軽量化を計ったのです。

ちなみにこの零戦の機体の重量は「約1,700kg」で、
「トヨタ クラウン ハイブリット」とほぼ同じ重さしかないのです。



コクピットの左側の側面を見てください。
「薄っぺらい」と感じませんか?

なんと全く「防弾装備」が施されていないのです!!!
コクピットの側面は「一ミリ以下のアルミ合金」のままなんです!!!


当時の列強国の戦闘機は、コクピットの周りには、10ミリ以上の
鋼鉄の防弾板が装備され、敵機銃弾からパイロットを守るのですが、
当時の海軍が三菱に提示した要求書には「防弾装備」への要求が
なかったそうです。

つまり 「パイロットが敵弾に当たってしまう」 ことに対しての対応が
されていないのです。 「敵の弾に当たる前に、敵を落とす」 という思想が
軍部にあったと言われています。




その後、零戦の捕獲に成功した米軍は、
優れた運動性能や航続距離を思い知らされたのですが
その反面「全く施されていない防弾装備」に相当驚いたようです。





オリジナルの計器板



計器板も製造当時のまま残されています。

・最高速度530km、
・航続距離3,300km以上、
・実用上昇限度11,000m

という性能を考えると
「たったこれだけ?」という印象を持ってしまいます。
実際、余計なものは一切省かれています。


まだ「レーダー」など装備されていなかった当時は、
敵機の発見するのは「パイロットの目」。

先に敵機を発見すればそれだけ早く優位な方向から
攻撃を仕掛けることが出来ます。

「真昼に星を見る訓練をする」などという映画の
ワンシーンがあったほど大事な要素。


当時の零戦パイロットは世界最高レベルで、
この技量が零戦の無敵伝説を作ったといえます。

海軍のパイロット養成機関「予科練」には全国から、
知能、体力ともに優れた者が選抜され、想像を絶する訓練を経て、
列強に大きく劣る「工業力」や「技術力」をカバーしました。

復元された計器板



これはドイツ製の光学照準器を参考に製造されたもので、
2枚のガラスの間に十字の照準線が映像で映し出されます。

(それまでの照準器は、望遠鏡のような筒に
顔を思いっきり近づけて片目で覗いていました。)





7.7ミリ機銃。
空気抵抗を抑えるため、エンジンカウリング越しに
弾が発射されるようになっています。




風防に使われている透明素材は「ガラス」でなく
「アクリル樹脂」で出来た素材だそうです。

破片をこすり合わせると、独特の臭いを発することから
「匂いガラス」と呼ばれました。ただ当時のアクリル樹脂の製造技術は
欧米に比べると劣って、透明度、平滑度は低かったようです。

風防の枠はオリジナルのようです。






かつて、零戦のプラモデルに色を塗る際に、
最も苦労したのがこの風防の「枠」。

プラモデルの風防は透明な部品なので、風防の枠に
色を塗っていかなくてはなりませんが、細い面相筆で塗ると、
どうしても「ぺろっ」とはみ出してしまうんです。

いつもそこで失敗していたんですが、、プラモデル雑誌にて覚えた技は
風防全体に「マスキングゾル」という半透明の薄い膜を形成する液体を塗って、
それが乾いたら、カッターで枠の部分だけ切り取って、その上から色を塗って、
「マスキングゾル」をはがすとOK。というものでした。

懐かしい・・・




20ミリ機関砲の銃口


機関部
2ガラスケース内に展示されています。


翼内に搭載の「20ミリ機関砲」は、当時の戦闘機の武装としては
世界最強クラスのものでした。

「機関銃」は弾丸が貫通することで敵機にダメージを与えますが、
「機関砲」は弾丸の内部に「炸薬」が入っており、着弾すると同時に爆発し、
大型の爆撃機でも撃墜することが可能でした。












2013年10月1日火曜日

本物の「ゼロ戦」を訪ねて(その2 機体)


「キラフテ 木の靴べら専門店」 店主の宮原です。


それではじっくりと実機を見てみましょう。

「意外に大きい!」









この実機は、南方戦線のタロア島に墜落していたもので、
それを譲り受け修復。


「零式艦上戦闘機三十二型」という型式で、それまでの零戦の
主翼の端を切り取って、空気抵抗を減らしました。

さらに、エンジンを新型に換装し、速度の上昇を狙ったもので、
本来の艦載機ではなく、陸上基地で使うために改造された型式。

ど迫力の機首!
70年以上も前に作られたとは思えません。


この三十二型の前の「二十一型」が最も有名な機種だと思うのですが、

 ・ 最高時速530km
 ・ 航続距離2200km(落下増槽つきで3300km)
 ・ 空中での優れた運動性能
 ・ 7.7ミリ機銃×2、 20ミリ機関砲×2  の重武装

を誇り、出現当時、まさに無敵の戦闘機でした。
米軍に 「零戦とは絶対に一対一で戦うな!」 と言わしめたほどです。



子供の頃に読んだ本に書いてあったんですが、
開戦前にこの「零戦」に対して、海軍から要求された性能は、
スポーツの世界にたとえると

 ・スピード性能においては「100メートル短距離走」で、オリンピック級。
 ・長距離性能においては、「マラソン」でこれもオリンピック級。
 ・格闘性能においては「格闘技」で世界チャンピオン。

これを一人の選手ですべて実現させるようなもの・・・だそうです。


世界にも全く前例のない海軍のメチャクチャな要求を、
当時の日本の工業力で実現するために堀越ら三菱重工のチームが
骨身を削るような努力を重ねたのが、  

   「徹底した空気抵抗の低減と、軽量化」。

これは零戦の前の「九十六式艦上戦闘機」の開発から堀越氏が
目指してきたものです。


特に軽量化において、堀越氏が部品設計チームに要求したのが、

   「1グラム単位」の軽量化!

人間にあてはめると 「スーパーマイクロダイエット」 といった感じでしょうか。











空気抵抗の低減に採用されたのが、「引き込み脚」。
飛行中は、翼の付け根にすっぽり収まります。
(それ以前の日本の戦闘機の脚は飛行中も出っぱなし)

これでスピードは大きくアップ。







「こんなに細くて大丈夫?」と心配になりますが、
空母にすら着艦できるんです。徹底した軽量化の成果。



機体後部の「尾輪」
こちらも機体内部に収納できます。





プロペラは3枚で、以前の飛行機に多かった2枚より増えて、
エンジンの回転力をより多く推進力に変換できます。

「ピッチ可変」といって、エンジンの回転の増減や、
飛行状態によってプロペラの角度を自由に変えることが出来ます。

プロペラの中央の膨らみに
複雑なギアが組み込まれています。






主翼をはじめ外板には、住友金属で開発された
「超々ジュラルミン」が採用されています。

日本独自の開発で、従来の「ジュラルミン(アルミの合金)」の上をいく
「超ジュラルミン」のさらにその1.3倍の強度を誇りました。
(ジュラルミン→超ジュラルミン→超々ジュラルミン)

この「超々ジュラルミン」の強度を活かして、外板を薄くすることができ、
軽量化につながります。

補填した外板も多いですが、きれいに修復しています。





また主翼には、低速でも失速しにくい「翼端ねじり下げ」という
微妙なねじりが付けられていてます。

スペースの狭い航空母艦への着艦性能も高められています。
翼の先端に付いている「ピトー管」
これで飛行機の速度を測ります。





主翼の付け根と、胴体との繋ぎ目には緩やかなカーブを付けて
翼と胴体の間に流れる空気抵抗を減らします。
フィレット」といい、現在の大型ジェット旅客機にも採用されています。






また飛行機に使われる外板のアルミ合金は溶接がきかないので、
アルミの鍋などに使われる「リベット」で留めていました。

一般的なリベットは頭が半円形になっていて、飛行機に使用すると
その飛び出しが空気抵抗となり、飛行性能がかなり悪くなってしまいます。

そこで、いったんリベットを締め付けた後、半円形のリベットの頭を、
ひとつずつ削り落とさねばなりませんでした。



そののち、頭が平面の「皿型リベット」が使用されるようになり、
いちいちリベットの頭を削る必要は無くなりました。

しかし今度は、皿形のリベットが、飛び出さないために、
あらかじめ外板に皿形の凹みを削る工程が必要になりました。

空気抵抗は減らせても、またしても莫大な労力がかかってしまいます。
また凹みを削った分だけ外板の強度が落ちます。



そこで、堀越氏は「枕頭鋲(枕頭リベット)」を採用。

外板にリベットの穴だけを開けて、リベットを裏側から締め付けていくと
リベットが外板に自然に食い込んでいき、リベットの頭を削る工程も、
外板に凹みを削る工程も無いまま、外板をフラットに保つことが出来ます。


これにより、外板の強度を落とすことな空気抵抗と製造コストを
大幅に低減することが出来ました。


胴体のラインは直線ではなく、
なだらかな曲線で構成されています。
空気抵抗を少しでも減らすための工夫です。





「垂直尾翼」、「水平尾翼」などの操縦席から離れた部分の操作は
「ワイヤー」で操縦桿などを引っぱって行っていました。
(現在の戦闘機は、電気信号)

しかし航空機の速度が上がってくると、低速だった時代には問題なかった
「舵の効き過ぎ」という問題が起こってきました。

時速500kmを超える高速では、主翼をはじめ垂直尾翼や水平尾翼にも
大きな空気抵抗がかかっている状態となり、操縦桿のわずかな動きでも、
機体が大きく動いてしまい、操縦者の意図以上の動きをしてしまいます。

垂直尾翼






そこで堀越氏は、操縦桿と舵がつながっているワイヤーの強度を
あえてと落とし、伸びやすくました。

飛行速度が上がり、舵に大きな空気抵抗がかかった状態では
ワイヤーが大きく伸びて、舵の動きが小さくなり、パイロットが
意図した機体コントロールが出来ます。

逆に速度が低速の時は尾翼にかかる空気抵抗は小さいので
ワイヤーは伸びることなく舵も大きく効いてくれるのです。
これも堀越氏の考案で、「世界初」 です。

水平尾翼


「零戦」についての逸話をひとつ。



当時、中国大陸にて、義勇軍として戦っていた米軍の将軍から

 「日本の強力な新型戦闘機が出現せり」

という無電を受け取ったアメリカ本国は、


「君は臆病風に吹かれているのではないのか?
日本がそんな戦闘機がつくれるわけがない。
本当に存在するなら、その実物を送られたし。」

と返信しました。



しかしそれは長い間実現しませんでした。


なぜならその当時に「零戦」を撃墜できる戦闘機は
米国にすらなかったからです・・・